屈折型ビームシェーパー(RoE):レーザー光の強度分布を最適化

屈折型ビームシェーパー(RoE):レーザー光の強度分布を最適化

ビームシェーパー


 

屈折型ビームシェーパー?

 

はい、屈折型ビームシェーパーは、RoE(Refractive Optical Element)と呼ばれたり、フィールドマッパーと呼ばれたりする光学素子で、主にシングルモードのレーザをビームシェーピングします。

 

回折型と何が違うの?

 

回折型(DoE)は光の回折現象を利用したビームシェーパーで、屈折型は屈折を利用しています。屈折型は回折型と比較すると効率の面でメリットがあります。



屈折型ビームシェーパーとは

屈折型ビームシェーパー(RoE)は、入射するビームに意図的に収差を与えることにより、強度分布を変えるデバイスです。RoEには集光型ビームシェーパーと結像型ビームシェーパーがあり、前者は入射するガウシアンビームをAiry Diskに、後者は入射するガウシアンビームをトップハットにシェーピングします。


 

Airy Diskって何?

 

Airy Diskは強度分布の種類の一つです。ガウシアンビーム以外の光は、伝搬しながら同じビームプロファイルを保つことができません。Airy Diskを生成することで、ファーフィールドにトップハットを形成することができます。

以下図をご参照ください!



ガウシアンビームを集光すると、レンズの焦点位置にはガウシアンビームが生成されます(a)。
トップハットビームを集光すると、レンズの焦点位置にはAiry Diskが生成されます(b)
Airy Diskを集光すると、レンズの焦点位置にはトップハットが生成されます(c)


集光型ビームシェーパー

集光型ビームシェーパーは入射するガウシアンビームをAiry Diskに変換します。Airy Diskをレンズで集光すると、レンズの焦点位置にトップハットビームが生成されます。レンズの焦点位置の手前には、ビームウェストが存在し、その更に手前には、トップハットやリングビームが生成されます。
集光型ビームシェーパーは、小さなトップハット、リングビームを生成するのに最適なビームシェーパーで、主に微細なレーザ加工に使われています。
集光型ビームシェーパーには、筒型、1枚タイプがあり、前者は出射ビームの拡がり角制御機構がついています。装置の都合上、ビームシェーパーを挿入後に、ワーキングディスタンスを変更できない場合は筒型がおすすめです。

集光型ビームシェーパーでは、レンズの焦点位置にトップハットが生成されます。
そこからレイリー長2個分移動した位置にビームウェスト、更にレイリー長1個ずつ移動していくと、トップハット、リング、トップハットが得られます。


結像型ビームシェーパー

結像型ビームシェーパーは入射するガウシアンビームをトップハットに変換します。トップハットのビームは集光するとAiry Diskになってしまうため、レーザ照射対象物の位置でトップハットが必要な場合は、結像型ビームシェーパーから出射された光を対象物上に結像する必要があります(以下図)。


波面をキープ

結像型ビームシェーパーは、入射する平面波を崩すことなくトップハットビームを生成することができ、ホログラフィや干渉パターニングなどに応用されます。


アクロマート設計

一つの結像型ビームシェーパーで複数の波長のビームをトップハットに変換することができます。顕微鏡の照明やディスプレイなどに最適です。


取扱製品

 

どんな場合に集光型を使ってどんな場合に結像型を使うの?

 

一般的には、小さなスポットでトップハットが必要な場合は集光型、比較的大きいエリアでトップハットが必要な場合は結像型と覚えておきましょう。

詳細は弊社の営業マンに聞いてください!


 

集光型ビームシェーパー(フォーカルπシェーパー)は入射するガウシアンビームを集光位置でトップハットビームに変換します。そのほか、ドーナッツ形状のビームなども得られます。溶接、AM(AdditiveManufacturing)、穴あけ、スクライビングなどのレーザ加工に有効です。溶接時のスパッタの低減や、微細加工時のHAZ(熱影響領域)の低減に役立ちます。


製品仕様

1枚タイプ集光型ビームシェーパー

1枚タイプ集光型ビームシェーパーは、高出力レーザに対応したシンプルなビームシェーパーです。このビームシェーパーは専用のマウントに取り付けられており、マウントのイモネジを利用して簡易なアライメントを行うことが可能です。

各波長、ビームサイズに合わせた幅広いラインナップがございます。

 

型式 波長 入射ビーム径 最大レーザパワー

Focal-πShaper NIR_Q-3

1500-2100nm

2.5-4mm

100W

Focal-πShaper NIR_Q-4

3-5mm

100W

Focal-πShaper NIR_Q-5

4-6mm

200W

Focal-πShaper NIR_Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper NIR_Q-10

8-12mm

200W

Focal-πShaper 1064_Q-3

1020-1100nm

2.5-4mm

100W

Focal-πShaper 1064_Q-4

3-5mm

100W

Focal-πShaper 1064_Q-5

4-6mm

200W

Focal-πShaper 1064_Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper 1064_Q-10

8-12mm

200W

Focal-πShaper 1064_Q-14

11-17mm

300W

Focal-πShaper 1070_Q-5-HP

4-6mm

1,500W

Focal-πShaper 1070_Q-7.5-HP

6-9mm

2,000W

Focal-πShaper 1070_Q-10-HP

8-12mm

3,000W

Focal-πShaper TiS_Q-3

750-900nm

2.5-4mm

100W

Focal-πShaper TiS_Q-4

3-5mm

100W

Focal-πShaper TiS_Q-5

4-6mm

200W

Focal-πShaper TiS_Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper TiS_Q-10

8-12mm

200W

Focal-πShaper TiS_Q-14

11-17mm

300W

Focal-πShaper NUV-Q-3

335-560nm

2.5-4mm

100W

Focal-πShaper NUV-Q-4

3-5mm

100W

Focal-πShaper NUV-Q-5

4-6mm

200W

Focal-πShaper NUV-Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper NUV-Q-10

8-12mm

200W

Focal-πShaper 266-Q-3

250‐275nm

2.5‐4mm

100W

Focal-πShaper 266-Q-4

3-5mm

100W

Focal-πShaper 266-Q-5

4-6mm

200W

Focal-πShaper 266-Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper 266-Q-10

8-12mm

200W

Focal-πShaper CO2_Q-5

9000-11000nm

4-6mm

200W

Focal-πShaper CO2_Q-7.5

6-9mm

200W

Focal-πShaper CO2_Q-10

8-12mm

200W



広がり角調整機構付き集光型ビームシェーパー

拡がり角調整機構付き集光型ビームシェーパーは、その名の通り、出射ビームの拡がり角を補正する機能があります。光学ヘッドやワーク台に高さ調整機構がない場合には、このタイプのビームシェーパーが便利です。


型式

波長 寸法 ダメージ閾値@5ns

Focal-πShaper 9_1940_HP

1800-2050nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_1550_HP

1450-1650nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_1064_HP

1020-1100nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_TiS_HP

750-850nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_532_HP

510-550nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_355_HP

340-370nm

44×93mm

100mJ/cm2

Focal-πShaper 9_266_HP

255-275nm

44×93mm

100mJ/cm2


拡がり調整機構付きQBH/QD集光型ビームシェーパー
型式 波長 入射ビーム2Θ(1/e2) 最大入射パワー

Focal-πShaper NA0.1_50_80_1064

1020-1100nm

0.2-0.24

2kW (CW)

Focal-πShaper NA0.06_50_80_1064

1020-1100nm

0.1-0.12

2kW (CW)


CO2レーザ用集光型ビームシェーパー
型式 波長 入射ビーム2Θ(1/e2) 寸法

Focal-πShaper10?_CO2_9.4

9.3-9.5um

7.0-10.0mm

45×72mm

Focal-πShaper CO2_Q-10

10.5-10.7m

8.0-12.0mm

42×29mm



 

DoEと集光型ビームシェーパーはどっちを選んだらいいんだろ?

 

トップハットやリングビームが必要な場合は集光型ビームシェーパーが最適だと思います。

DoEは回折現象を使ったビームシェーパーであるため、屈折型のフィールドマッパーと比較すると効率が低いです。

 

集光型には筒形と1枚レンズ型があるみたいだけど、どう違うの?

 

集光型ビームシェーパーはガウシアンビームをAiry Diskという強度分布に変換します。

Airy Diskを集光すると、レンズの焦点位置の手前にリングやトップハットが生成されます。

つまり、これらを使う場合はワーキングディスタンスを変える必要があります。

しかしながら、ワーキングディスタンスを変えられないといった場合もあるかと思います。

筒形はそういった場面で役に立つ製品で、筒形にある広がり角調整機構により、レンズの集光プレーンにリングビームを持ってくるといったことができるようになります。

 

集光型ビームシェーパーはどうやって使うの?

 

以下にご説明しますね



集光型ビームシェーパーの使い方

集光型ビームシェーパーは、適切なサイズのガウシアンビームが入射すると、Airy Diskビームを出力します。Airy Diskはフーリエ変換するとトップハットになりますので、このビームシェーパーの出射ビームを回折限界のレンズで集光することによりトップハットビームが得られます。

以下図のようにレンズの焦点の位置にトップハットが得られます。その位置からレイリー長2個分(2zR)レンズよりに移動した位置にビームウェスト、さらに1zRずつレンズよりに移動していくと、トップハット、リング、トップハットとビームプロファイルが推移していきます。





集光型ビームシェーパーのアライメント方法
 

ビームシェーパーのアライメントって難しいんでしょ?

 

アライメントに必要なもの(ビームシェーパー用のマウント、専用アライメントツール、ビームプロファイラ)があれば比較的どなたでも簡単にアライメントができます。

 

初めてでもできるかしら?

 

もちろんです。

和文マニュアルも作成していますし、弊社の営業マンがしっかりサポートします。

アライメントがズレると正しいビームプロファイルが得られませんので、ビームシェーパーとレーザのアライメントをしっかりする必要があります。

ビームシェーパーには専用のマウントがあります。4軸(X、Y、XΘ、YΘ)でアライメントをします。

アライメント専用治具もご用意しています。

このアライメントツールはビームシェーパー専用マウントに取り付けられるようになっており、まずはレーザとアライメントツールのアライメントをし、その後アライメントツールを外してビームシェーパーを取り付けるという流れで光軸合わせをしていきます。

アライメントツールには、ビーム入出射位置に小さなピンホールがあいています。この2つのピンホールを通過した光が干渉縞を作りますので、ビームプロファイラで観察しながら干渉縞が上下左右均等になるようにアライメントしていきます。

これでアライメントは概ね完了です。(状況により微調整が生じることがあります)


結像型ビームシェーパーは入射するガウシアンビームをトップハットビームに変換します。ビームシェーパーカラン出射ビームを結像することで様々なサイズのトップハットビームを生成することができます。

当社の結像型ビームシェーパーは特殊な光学設計を行っており、他社のトップハットビームシェーパーでは実現ができない、アクロマート設計や波面をフラットのトップハットビーム生成が可能です。

そのため、顕微鏡の照明やホログラフィ、干渉パターニングのようなアプリケーションに利用されています。


製品仕様

型式 波長 入射ビーム径(1/e2) タイプ

πShaper 6_6_1064

1020-1100nm

6.4-6.5mm

平行光入射

πShaper 6_6_532

510-550nm

6.3-6.4mm

平行光入射

πShaper 6_6_1550

1500-1600nm

6.4-6.5mm

平行光入射

πShaper 6_6_2.05

1900-2160nm

6.4-6.5mm

平行光入射

πShaper 6_6_1.9-2.8

1900-2800nm

6.1-6.2mm

平行光入射

πShaper 6_6_NIR

1100-1700nm

5.9-6.0mm

平行光入射

πShaper 6_6_VIS

405-680nm

5.9-6.0mm

平行光入射

πShaper 6_6_NUV

335-560nm

5.9-6.0mm

平行光入射

πShaper 6_6_TiS

700-900nm

6.4-6.5mm

平行光入射

πShaper 6_6_xTiS

750-1100nm

5.9-6.0mm

平行光入射

πShaper 6_6_325

305-345nm

6.3-6.4mm

平行光入射

πShaper 6_6_350

330-380nm

6.3-6.4mm

平行光入射

πShaper 6_6_266

250-275nm

6.3-6.4mm

平行光入射

πShaper 6_6_213

206-220nm

6.3-6.4mm

平行光入射

πShaper 6_6_350C

330-380nm

75mrad

拡散光入射

πShaper 12_12_10.6

10000-11000nm

12.0-12.2mm

平行光入射

πShaper 12_12_1064_HP

1020-1100nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_1064_HP_W

1020-1100nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_1064C

1020-1100nm

58mrad

拡散光入射

πShaper 12_12_TiS

700-900nm

12.8-13.0mm

平行光入射

πShaper 12_12_TiS_HP

700-900nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_532

515-550nm

12.8-13.0mm

平行光入射

πShaper 12_12_532HP

515-550nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_355HP

330-380nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_266

250-270nm

12.6-12.8mm

平行光入射

πShaper 12_12_266HP

250-270nm

12.0-12.1mm

平行光入射

πShaper 12_12_266C

250-270nm

60mrad

拡散光入射

πShaper 37_34_1064

1020-1100nm

160-190mrad

拡散光入射


 

結像型ビームシェーパーでトップハットが得られるんだから、それをそのままターゲットに充てたらいいんじゃない?

 

ガウシアンビームは例外ですが、それ以外の光は伝搬しながら強度分布が変わっていきます。トップハットビームもまた伝搬しながら強度分布が変わっていきますので、どこまでもトップハットでいられるというわけではありません。

 

だから結像が必要なのね!

でも結像するって難しそう。

 

やりかたは非常にシンプルですよ。

もちろん結像光学系も含めての提案もできますので、まずはプロフィテットの営業マンに聞いてください。


AdlOpticaについて

AdlOpticaはドイツベルリンにある、ビームシェーパー専門メーカーです。
ビームシェーパーの専門メーカーとして20年の経験があり、そのラインナップはUVからIR、mWからkW、CW、パルス、クロマティック、アクロマティックと非常に豊富です。
すべてのビームシェーパーは屈折光学系で作られており、ほぼ100%の透過率の高品質ビームシェーパーを提供します。
近年ではマルチフォーカス光学系やマルチスポット光学系など、偏光によるビーム制御を行う新しいタイプのビームシェーパーをリリースしており、特にマルチフォーカス光学系foXXusはSPIEにてPRISM Awardに選出されました。


AdlOpticaの主な製品

マルチスポット光学系
リングモードジェネレータ
マルチフォーカス光学系
レーザ焼き入れヘッド
サファイヤコリメータ
ズームコリメータ
熱レンズ効果対策製品
透明材料加工用マルチフォーカス光学系
収差補正NAレンズ